各種CMSのメリット・デメリット&チャート比較
これまでCMS4社(ワードプレス、スクエアスペース、WiX、ジンドゥー)について様々な切り口でチェックした比較表を挙げてきました(前回までの記事一覧はこちら)。今回はそれを踏まえて、各社のメリット・デメリットをリストアップしたほか、各社の強みが分かる8つの共通項目で5段階評価したチャートを作りました。ご自身の価値観と合うものを選んで後悔しないホームページ作りと運用にお役に立てば幸いです。
もくじ
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まずはじめに!チャート各項目の解説
これまでご紹介してきた切り口(「コスト」「契約のフレキシブル度」「スペック」「サポート対応」)以外に、ウェブ制作ビギナーにとって念頭に置いておくべき項目や、これから本気で自身のビジネスまたはブランドをホームページ運用していくにあたって検討しておくべき項目を8つリストアップしました。
CMS各社をこの8つの項目で5段階評価する際に基準とした視点を以下に補足します:
【チャートの各項目補足】
容易性
CMS導入から公開まで分かりやすいか
ワンストップでウェブ公開に必要な手続きができるか
必要なツールがオールインワンで揃っているか
ユーザビリティ
管理画面のルック(管理画面が分かりやすくシンプルな設計か)
管理画面のフィール(操作がより直感的に行えるか)
WYSIWYG度 ※「What You See is What You Get(見たままを得られる)」という意味
編集中の快適性(動きが重くないか)
デザイン性
テンプレート/テーマの洗練度や個性
デザインビギナーでもプロっぽく仕上げられるか
機能性
プラグインの充実度
カスタマイズ性
コードによる開発度
拡張性
ビジネスの成長や戦略に合わせてページを増やせるか
デジタルマーケティングにおいて生存能力の高い/互換性のあるツールのアドオンが可能か
サポート
ヘルプガイドのUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザーが得られる体験)
カスタマーサポートの充実度
カスタマースタッフの対応力(顧客体験)
コスト
プランがその価格に見合う価値があるか
スモールスタートしたい人向けの良心価格やキャンペーンがあるか
それでは各CMSのメリット・デメリット、そしてチャートを見ていきましょう。
ワードプレス
ワードプレスのメリット・デメリット
テーマやプラグインが無料から有料まで豊富(膨大)に用意されている
ブログ記事に特化したエディタ画面がブロガーに使いやすい。
予算次第で機能を拡張できる。
技術次第で見た目を自由にカスタマイズできる。
世界で最も使われているCMSのため、ノウハウがネット上に多く存在する。
オープンソースのプログラムでユーザーが多いため悪質な攻撃(例)のターゲットになる可能性が高い。
サーバーやドメインプロバイダーを自分で探して選定・設定する手間がかかる。
サーバーメンテナンスやドメインの更新、セキュリティ対策など保守管理を自分でする手間がかかる。
ワードプレス本体のプログラム更新毎に各種プラグインとの互換性次第では動かなくなるリスクがある。
ワードプレスはコストを最小限に抑えたい人(でもそれなりにウェブの知識がある人)にとって大きなメリットがあります。どうしても豊富(膨大)な情報やプラグインから正しい情報や不良品でない、またはコストに見合ったプラグインを選択するには初心者は苦労すると思います。デメリットに挙げた様々な”手間”を考えると、全くの初心者や、高度なウェブの技術を学ぶ意欲や時間がない人は外注することも検討した方が良さそうです。
ワードプレスのチャート
TOTAL
29
容易性「1」:とにかくビギナーにとって難易度が高いため1としました。ただ最近の傾向として、編集画面のUIがスクエアスペース寄りになってきたとの評価もあり、今後のさらなる改善に期待したいところです。
ユーザビリティ「3」:いくらワードプレスの管理画面が最近使いやすくなったとはいえ、ビギナーにとってはまだまだ複雑で、先ずどうしたらよいか分からず使いこなせない可能性があります。
デザイン性「4」:デザイナーであればいかようにもオリジナル性を出せるのがワードプレスの良い点です。一方、ノンプロの場合、購入したテーマが人気のものであればあるほど、ほかと似たような(見たことあるような)サイトになりますので、ここは4としました。
機能性・カスタマイズ性・拡張性「5」:これはオープンソースならではですが、世界中の開発者がワードプレスのプログラムコードを使ったプラグインを提供し、カスタマイズしています。サーバー環境やツール次第でその拡張性は無限大ではないでしょうか。
サポート「2」:ワードプレスユーザーによる情報は多いものの、探し出す手間は本業に集中したい人にとってストレスです。また、ワードプレス本体だけでなく、サーバーやドメインに関すること、テーマ販売者からのサポートがある場合でも、それぞれ窓口が異なるため利便性や合理性といった点で低い評価となりました。
コスト「4」:ワードプレスのみなら5なのですが、ホームページを公開するのに最低限必要なコストは発生します。また、有料のテーマやプラグインもSEO対策やほかの便利な機能を追加したいとなると、意外とほかのCMSより費用が発生することになります。知識が増えればコスパの良いプラグインが分かってくるので、使い方次第でリーズナブルなCMSといえます。
スクエアスペースのメリット・デメリット&チャート
スクエアスペースのメリット・デメリット
ストレージ&帯域無制限、1,000ページものページを作成できるのでホームページを成長させ、アクセス増加にも対応可能。
Webデザインアワードを受賞したデザインチームによる洗練され無駄のないテンプレートが用意されている。
直感的に使える操作画面でSEOなどの施策が自然に行えるUI。
ダウングレードがいつでも可能で差額分の返金が可能。
カスタマーサポートの満足度が高い。
日本語版がない(管理画面やヘルプガイド、カスタマーサポートが英語であることや、日本語フォントが豊富にない)
カスタマーサポートの時間が日本の夜~朝の時間帯。
Eコマースプランはあるが日本円決済がないため国内向けではない(ShopifyやBASEなどと連携すれば販売可能)
選べるプランが少ない。
ウェブデザイン初心者でも統一感のあるクリーンなサイトになるよう導いてくれるのがスクエアスペースの特長といえます。また、作成ページ数やサーバーのストレージ量などをみても、どのプランでも安心の許容ボリュームなので、プラン変更を余儀なくされることなく長期に渡って運用できるCMSといえそうです。ただやはり残念なのは日本語でないこと。管理画面やヘルプガイド、サポートが日本語対応となれば、下のチャートの「容易性」「ユーザビリティ」「サポート」はそれぞれ1点ずつ加点されます。早く日本でのローカライズが始まってほしいところです。スクエアスペース側ではリクエストが増えれば実現の可能性が高まるといっていたので、ユーザーの方は是非リクエストしてください。
スクエアスペースのチャート
TOTAL
28
容易性「3」:導入からホームページ公開までワンストップで簡単に行えるCMSですが、日本語表示ではない点から3としました。
ユーザビリティ「4」:スクエアスペースの編集画面は例えばiPhoneを初めて手にした時の、トリセツがなくても直感的に使えた感覚と似ています。それほど、目を泳がせることなく、暫く触っているうちに会得できるよう考えられているUIです。ただ英語なので5にはしませんでした。
デザイン性「5」:テンプレートは現在100を超えた程度ですが、そのどれもに量産されたデザインではない、洗練さやユニーク性を感じます。好みの問題も影響しますが、ここは世界最大級のウェブデザインアワード「Awwwards.」で何度もスクエアスペースのデザインチームが認められたことを評価して5としました。
機能性「3」:自社での開発にこだわりを見せるスクエアスペースは、統合するプラグインにもかなり慎重なようです。そのため、ほかのCMSに比べると少なく感じます。
カスタマイズ性「4」:スクエアスペースには「Developer Mode(開発者モード)」という技術者向けプラットフォームがあり、そこではかなり柔軟にカスタムすることが可能です。
拡張性「3」:スクエアスペースの作成可能ページ数は1,000ページ。これにブログページは含まないため、かなり大きなサイトにまで成長させることができそうです。
サポート「3」:全米のカスタマーサービスで受賞経験があるスクエアスペースの親身なサポートは是非体験してもらいたいところですが、チャットの対応時間がアメリカの日中時間であることや、英語であることを考慮して3としました。
コスト「3」:スクエアスペースは無料プランはありませんし、特別安い訳ではありませんが、だからこそ無制限のサーバー容量や帯域幅、そしてセキュリティにしっかり反映しているそうです。また、独自ドメインやG Suiteの初年度無料サービスがあり、ダウングレードしても差額分は返金してくれるなど良心的です。
WiXのメリット・デメリット&チャート
WiXのメリット・デメリット
無料プランからある。
ポップアップやバナー、チャット機能やメルマガ配信といったビジネスに不可欠なマーケティング機能が標準装備されている。
選択肢の多いデザイン編集機能。
動画を直接アップロードできる。
電話でのサポートが受けられる。
価格が税抜き表示と税込み表示のものが混在し、プラン以外にかかる費用や基本機能として含まれているサービスでも課金が必要なものなど、隠れた価格が多い。
作成可能ページ数が100ページと少ない。
テンプレートの変更ができない。
CSSを利用できないため、見た目を好きなようにカスタマイズできない。
ページが重い(編集画面やヘルプガイドなどWiXのページは表示されるまで総じて時間がかかる印象)。
WiXの特徴はその標準装備されている機能の多彩さにあり、”攻めてる”印象です。オンラインショップやブログ、動画での発信やチャットで接客したい方にはWiX内で済むのでとても便利です。ただ、上限のページ数がわずか100ページであること、また、細かく複雑なプラン設定と、付帯アプリが無料ではない”隠れたコスト”があるケースもあるので、必要な機能を含めたプランの総額をよく確認して契約する必要があります。
WiXのチャート
TOTAL
24
容易性「4」:スクエアスペースと同様にワンストップでホームページの公開ができます。やはりサーバーやドメイン、メールアカウントの接続などすべて一つの窓口でできるのはありがたいです。
ユーザビリティ「2」:管理画面がマウスオーバーしないと出てこないメニューや、一部は英語などちょっとトリッキーです。また、WiXはなぜか編集中の動きが鈍いのが難点です。たまにしか触らないユーザーであれば許容範囲かもしれませんが、制作代行者にとってはなかなかのストレスです。
デザイン性「4」:WiXは提供しているテンプレートの傾向からポップでカジュアルな印象です。ロゴツールやGoogleマップの配色パターン、ボタンの種類など、バラエティに富んでいてホームページ作りが楽しく感じます。無計画で作り始めると、選択肢の多さが仇となって統一感のないデザインになってしまうので、事前にコンセプトをしっかり決めておく必要があります。
機能性「5」:デザイン面同様、各種機能がアプリ化して豊富に揃えている印象です。チャットやメルマガの配信が必要最低限とはいえ含まれているのは魅力的です。
カスタマイズ性「2」:豊富な自社機能をオリジナルでカスタマイズするのは難しそうです。汎用的かつグローバルスタンダードな機能が欲しい場合はアドオンした方が良いかもしれません。また、CSSで見た目の調整ができないのが残念です。
拡張性「2」:ここまで機能が豊富にありながら、作成可能ページ数が100ページまでなのが不思議です。SEOの観点からも心許ない感じがします。
サポート「3」:電話サポートが唯一あるのがWiXです。”VIP”がつくプランにしないと優先サポートは受けられませんが、VIPになれば24時間のメールサポートも受けられます。ヘルプガイドはカテゴリ別に振り分けられているものの、情報の新旧が不明なのと整理されていない印象であること、問い合わせまでの導線が「問い合わせさせない」感が強いので、ヘルプガイドの改善を強く求めます。
コスト「2」:無料プランからあり有料プランも良心的な価格から用意されています。ただやはり各価格表示が税抜きのものと税込みのものが混在していたり、機能の謳い文句に惹かれてプラグインを購入しても、さらに課金が必要な場合があるなど、快く支払えない感覚を覚えてしまう点から2としました。
ジンドゥーのメリット・デメリット&チャート
「AIビルダー」のメリット・デメリット
無料プランからある。
PCがなくてもスマホで新規作成可能
※ネットショップページの編集はPCのみ
質問に答えるだけである程度のホームページができる(考えずに済む)。
ブログ機能や決済機能がないなどビジネスに必要な機能がほぼない。
取り扱いドメイン数が少ない。
編集の自由度が大幅に下がる(似通ったデザインになりがち)。
最上位プランでも作成可能ページ数が50ページのためSEO対策には向かない。
「AIビルダー」でできることは商用ではほぼなさそうですが、取り急ぎ必要に迫られている人や、会社として存在していることをネット上でアピールしなければならない時に活躍してくれそうです。 とにかく深く細かく考えずに質問に応えればホームページができるというのは感激です。
「AIビルダー」のチャート
TOTAL
22
容易性「5」:これは他CMSに比べてダントツです。
ユーザビリティ「4」:AIビルダーはまだ複雑なサイト構造や機能には対応していないため、シンプルな設計になっています。そのためUIも分かりやすく、編集していてヘルプガイドとしょっちゅうにらめっこする必要がないほど「なんとなく触ってたら作れた」と思えるでしょう。
デザイン性「3」:デザインに慣れていないユーザーを迷わせることなく簡単にホームページが完成できることを念頭にできているAIビルダー故に、デザイン要素は少なめですが、ある程度のクオリティは保っています。
機能性・「カスタマイズ性」「拡張性」「1」:これはAIビルダーの特性だけに仕方ないかもしれません。ITリテラシーが高くなくてもホームページが作れるということが画期的なのです。機能やカスタマイズ性を重視するのであれば、他のCMSや「クリエイター」のプランを選びましょう。
サポート「3」:可もなく不可もなくといったところなのですが、無料プランでもダッシュボードから問い合わせできるのが便利です。
コスト「4」:無料プランが提供されているだけでなく、有料プランも良心価格です。機能が限定的なので妥当といえば妥当です。
「クリエイター」のメリット・デメリット
無料プランでも3,000ページまで作成可能。
日本語フォントが充実している(モリサワフォントが使える)。
動画の埋め込み可能サービスが10種と豊富にある。
契約の支払いに銀行振込が選べる。
テンプレートの変更ができない。
編集画面が使いづらい *1
共同編集の際アカウントを共有するため情報のアクセスレベル毎の権限付与ができない(データの保護リスクあり) *1
カスタマーサポートが手厚くない(優先サポートの意味が他社より劣る) *1
*1:「AIビルダー」にも該当
「クリエイター」は日本語フォントの豊富さがウリです。いくつか特筆するメリットはあるものの、ロゴ作成ツールやヘルプガイドのUIなど、所々WiXと似通っており、そのどれもがWiXを超えていない印象です。
「クリエイター」のチャート
TOTAL
24
容易性「4」:AIビルダーほどではないにしろ、クリエイターもスクエアスペース、WiX同様にワンストップで作成から公開が可能です。
ユーザビリティ「3」:クリエイターの編集画面も、AIビルダーとほぼ同じでシンプルな設計ですので、ワードプレスやWiXほど操作に迷うことはないでしょう。
デザイン性「3」:モリサワフォントが導入されているなど、美しい日本語の見せ方に注力されている点が素晴らしいです。ただなぜか管理画面の一部のテキストがMS明朝のような”ワープロ”感が出ているのが、管理画面とはいえ読み難いので気になります。テンプレートの雰囲気やロゴツールで提供しているデザインがWiXと似ていて、WiXほどバラエティには富んでいないため3としました。
機能性「2」:今回の各CMSで比較すると、機能性はやや劣る印象です。
カスタマイズ性「3」:コードを一切使いたくない方にとっては無用ですが、「クリエイター」ではHTMLとCSS、JavaScriptを使ったカスタマイズが可能です。
拡張性「4」:無料でも3,000ページまで増やせるのはスゴイに尽きます。ビジネスが多角化してくるとダッシュボードにいくつものホームページを作ることがあると思いますが、ダッシュボードにあるホームページすべての合計ページではなく、1つのホームページ毎に3,000ページとは太っ腹ですね。とはいえ、ジンドゥーのスタッフの方によると、実際に3,000ページまで利用しているユーザーさんはあまりいないそうです。
サポート「2」:同じジンドゥーなのに「AIビルダー」と「クリエイター」のサポートチームは違う組織なのかと思うくらい対応が微妙に違います。「クリエイター」の場合、優先の意味が、無料プランより優先するという意味らしく、 無料プラン契約者は問い合わせ窓口すらなく、ヘルプガイドでひたすら探すしか選択肢がない状態です。そのため有料プランユーザーが優先サポートを受けているという感覚を覚えることはないと思います。
コスト「3」:プラン価格は<PRO>と<BUSINESS>ではかなり開きがあるものの、機能的な差はあまりなく、フォントの量や商品掲載可能数といったサーバー容量に影響があるものの差が価格に反映されているようです。ネットショップや豊富な日本語フォントが不要であれば、他のプランの方がリーズナブルです。
なお、「クリエイター」には今回ピックアップした2つのプランのほかに、<SEO PLUS>(月額4,110円)と<PLATINUM >(月額5,190円)という上位プランがあります。今回の比較表では割愛しましたが、特徴は以下の通りです:
<SEO PLUS>プランの特典はrankingCoarch(自分のサイトを検索結果で上位表示されるようコーチしてくれるサービス)が付いていることです。
※スクエアスペースやWiXにも連携することができる機能ですが、rankingCoarchが重要機能だという方には、単体だと年間で$480(約5万円)するコストが実質19800円で利用できるのでお得です。
<PLATINUM>プランのただ1つの特典はデザイナーによるアドバイスを受けられることです。具体例が不明で2年目以降も必要なサービスなのかは判断しかねる特典です。
※ブランディングに注力したいフリーランサーには良いサービスかもしれません。
以上、なるべくフラットに評価してみましたがいかがでしたでしょうか。ただ、使い心地やデザインの好みなどは人それぞれですので、あくまでも参考としていただき、ご自身の価値観に合った最適なCMSが見つかることを祈っています。
次回はズバリ「こんな人やビジネスにおすすめ」なCMSをご紹介します。